学生時代、吉田君と話したことで印象に残っていることについて話しておきたい。

大学をやめてクライミングに専念するぐらいだから、彼はクライミングで一番になることを目指していたと思う。どういう話の流れだったかは覚えていないが、「世界のトップになれるんだったら40歳ぐらいで死んでもいい」というようなことを言っていた。私は「それは早すぎないか」とかなんとか言ったと思うが、それに対してはだらだら長生きしてもしようがない、というような返事だったように思う。   

まあ、若いときに特有の、極端な考え方と言えなくもない。しかし、当時の一般的な考えとしては、スポーツをばりばりやれるのは30歳ぐらいまでで、35ぐらいになればみんな引退するというような雰囲気だった。最近は食事とか、さまざまなケアが進歩しているから、スポーツ選手が40代でも現役という人が増えているが、当時は40代はスポーツ選手としては「もう終わっている」というような考えだったように思う。だから彼としては、やれるうちに、限界まで可能性を伸ばしたいという考えだったのだろう。そして、その通り、誰よりもクライミング一筋に生き、多くの成果を残してきた。

ただ、私は今、吉田君と同じ53歳になっているのだが、衰えている部分は多いものの、意外に進歩しているところもあったりする。6月にけがをしたので、今は全然駄目だが、ことしの初め頃は、指の力は過去最高ぐらいにあった。さすがに、けがはしやすくなっているが、若い頃に比べれば、トレーニングの仕方とか体のケアなど、いろんな面で知恵もついているとも思う。吉田君の最近のブログをみても、緩い傾斜のクライミング能力では過去最高かもしれない、という記述があったりして、彼も同じようなことを感じていたのかな、と思ったりもする。私からすると、年を取っても、それなりに限界を伸ばせる可能性はあるし、楽しみのあるということを感じている。その辺のところ、彼はどう思っていたのか、話し合ってみたかった。最後に見舞いに行ったとき話せばよかったのかもしれない。しかし、そのときは、意外に元気そうだったので、きっとまた会えると思ってあまり突っ込んだ話はしなかった。