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やっとメインガが登れた。とにかく時間がかかった。特に、ことしに入ってからはあと一手というところで落ちることが続いたのでストレスがたまった。でも続けていて良かった。
  今シーズンは去年の11月ごろからまじめにトライを始め、出だしから核心にかけてのムーブができるようになったので、12月にはリーチがかかった状態になった。しかし年末にまとまった雪が降り、上部のスラブに積もってしまった。1月初めに行った時は、わりと調子が良く、事実上完登というところまで行ったが、上部の雪のためトップアウトできなかった。
 2月下旬になって再び行ってみると、メインガの岩だけは雪が溶けていた。それから休みのたびにでかけていたが、ちょっと調子が落ちていたこともあり、惜しいところで完登を逃す連続だった。ルーフを抜けてCCCPに合流し、左手のカチを取ってから右手を3本指の穴っぽいカチに飛ばすところが、つなげてくると悪く、保持が甘くなって持ち直そうとしているうちに落ちるということが何度もあった。3月に入ってからそこのムーブを見直し、3本指でカチるのではなく、2本指にしてオープンハンドで持つほうが楽なことを発見。これで俄然、行ける感じがしてきた。
 次は登れるという気持ちでいたところ、大震災発生などで若干仕事の負荷がかかったせいか、急にぎっくり腰になってしまった。1日寝ていれば治ると思ったが意外に重症で、ふつうに歩けるようになるのに1週間以上かかってしまった。それから少しずつリハビリして、なんとか車でふくべまで行けるような状態になったので、きょう、駄目元で行ってみることにした。
 久しぶりのフクベは完全に雪が消え、木の芽も出始めていて春到来を感じさせた。岩の状態も良かった。
 最初に全体のムーブをさらってみると、指の力はけっこうあるものの、下半身の力が落ちているせいかフックなどが安定せず、足が切れまくる。CCCPのムーブをこなすのがやっとという感じで、とても登れそうには思えなかった。
 最初のトライもやはり駄目で、核心付近でフックの効かせ方が悪くフレークを取れずに落ちる。
 2回目のトライは若干ましになったが、下半身が岩から離れないようにするために全てのムーブに全力を出しているような状態で、CCCPに合流した時点ですでによれてしまい、上部のカチを取るムーブで落ちた。
 「こんな調子ではきょうは無理だな」とほぼあきらめムードになり、気晴らしに周辺を散歩する。やっぱり体力がまだ戻っていないのか、すでに脚ががくがくしている。
 3回目は軽い気持ちで行ったが、核心の右手アンダーが上手く持てて、スムーズに核心を突破。CCCP合流もスムーズに行き、左手カチも浅かったものの、4本指がかかった。次に右手の穴カチをきちんと持てば登れる!と完登を意識したのが悪かったのか、思っていた2本指持ちではなくなぜか3本指が中途半端にかかってしまった。そのままでは次のムーブがこなせそうにないので持ち直そうとするが左手のホールディングが完全ではないのでうまく持ち直せない。数秒ジタバタして落ちてしまった。くやしくてジタバタしたが、夕方になるにつれて力が出てきているのでもう一度だけやってみることにする。
 気晴らしに再び下の方まで林道を散歩し、指のぬめりを取るため手を洗って4回目のトライ。出だしのトウフックから核心の右手アンダー。トウフックを外すときの振られは問題なく、左手を中継ホールドに。左足をカチに上げて左手をフレークに飛ばす。フレークのホールディングが甘く、実質3本指しかかかっていない。が、行くしかない。右足フックをずらし、右手ガバアンダー。左手がちゃんと持てていないのでフックを外すときの振られに耐えるのがつらい。なんとかこなし、ルーフ抜け口のCCCPの出だしホールドに右手を飛ばす。この先はムーブは難しくないのだがよれている状態でどこまで力を出せるかが問題だ。テクニカルなトウフックの掛け替えをこなし、右手のそばに左手を添える。ここで左足が岩から離れたがなんとか戻す。右手カチ、左手中継カチから頭上のカチにデッド。止まった。しかし2本指しかかかっていない。持ち直す余裕はないからそのまま行く。右手を中継し、できるだけ体を引き上げてから右手をカチ穴に飛ばす。うまく2本指が入った。もう落ちないはずだが、よれまくっているので何があるか分からない。足をあげて左手を添え、右手カンテホールドから左手を抱え込み、思い切り勢いをつけて左手をガバにむけてデッドするとしっかり指がかかった!
 あとは片手ずつシェイクしながら慎重に登る。頂上に立ったときはどんなにうれしいだろうと何度も想像していたが、実際は、これまで失敗しすぎたせいか「本当に登ったよな?」「途中で足を着いてないよな」などと頭の中で今の登りを確認するばかりだった。 岩の裏から正面に戻り、マットを片付けたり、岩に着いたチョークを掃除していると徐々にうれしさが広がってきた。夕方のオレンジ色の光の中、のんびりと駐車場まで下っていくとき、何とも言えない開放感を味わった。